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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)277号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1  前示本件考案の要旨及び成立に争いのない甲第二号証(本件考案の実用新案出願公告公報)によれば、本件考案は、原藻タンクに投入した海苔原藻を揺動腕又は回転翼と横移送用のスクリユウコンベアからなる原藻送出装置を介して切断機の供給口へ給送すべくなした海苔原藻の給送切断装置において、特にスクリユウコンベアへの海苔原藻の絡み付きを解消し、併せて切断機への円滑な給送作業を維持確保し得る横移送用スクリユウコンベアを提供することを目的とするものであり(第三欄第四二行ないし第四欄第五行)、本件考案の要旨記載の構成を採用したことにより、スクリユウコンベアへの長い海苔原藻の絡み付き現象が解消され、そのため、従前のごとく海苔原藻の絡み付きによる装置全体の稼動停止や作業の連続性を何ら損なわないのみならず、絡み付いた海苔原藻の除去作業の困難性を解消し、ひいては切断機の供給口ヘの海苔原藻の円滑な給送をも確保する(第一〇欄第一七行ないし第二九行)という作用効果を奏するものであること、右のスクリユウコンベアへの海苔原藻の絡み付きとは、スクリユウコンベアへの軸杆に長い海苔原藻がくわえ込まれて絡み付き始めると、次々に長短の海苔原藻を連繋させてビニール紐のごとく引き伸ばした状態で多重に捲き付く現象であること(第三欄第一〇行ないし第三〇行)が認められる。

2  原告は、甲第四号証(昭和四八年特許出願公開第七二三七一号公報)には、スクリユウコンベアに海苔原藻が詰まつて空転する場合には放水が有効である旨の記載があり、海苔原藻が絡み付く問題点とその対策が示されているのであるから、同号証について海苔原藻の給送切断装置における原藻送出装置に海苔原藻の絡み付くのを防止する手段を講じることを予測させる記載は認められないとした審決の認定は誤りである旨主張するので、この点について検討する。

成立に争いのない甲第四号証によれば、同号証記載の発明は、機械採取などで比較的短く分断されて連繋性がなく、かつ粘着性があつて、自動供給の困難な海苔原藻の自動供給装置に関するものであること、従来装置において海苔原藻を切断機へ供給するには、ホツパー内に手で供給し、その後スクリユウによつて裁断部まで自動的に送り切断していたが、機械採取などで比較的短く分断された海苔原藻は相互の連繋性がなく、粘りがあるので、自動的に供給することが難しく、手で押さえつけたり、棒で刺突しなければ、連続かつ均等に供給することが困難であつたが、同号証記載のものは、切断機のホツパー上に海苔原藻貯蔵タンクを連設し、このタンク内の海苔原藻を移送翼で供給口に移送し、供給口上に移送された海苔原藻を押出棒で貯蔵タンク底面より下方に積極的に押し出すとともに、給水装置で供給口近くに水を流して海苔原藻を供給口に確実に連続供給するようにし、供給口から連続供給された海苔原藻をスクリユウによつて切断機に供給するものであること(第一頁左下欄第一六行ないし右下欄第一四行、第二頁右下欄第二行ないし第一七行、別紙図面(二)参照)が認められる。

ところで、前掲甲第四号証によれば、同号証には、海苔原藻の自動供給装置における給水装置から流した水の作用について、「給水装置Aの放水孔12からの放水は分断された海苔原料の様に相互の連繋性なく滑り易い物品の場合にスクリユウのみでは往々スクリユウの螺子溝に原料が詰つて空転して供給量が皆無になる場合や、海苔原料の水分が少なくごわごわして供給がスムーズに行われない場合に特に有効で、水と共に原料を供給口5へ確実に流し込む。」(第三頁右上欄第八行ないし第一五行)と記載されていることが認められ、右認定の事実によれば、甲第四号証には、比較的短く分断されて相互の連繋性がなく、かつ、粘着性があつて滑りやすい海苔原藻をスクリユウコンベアで移送しようとすると、往々にして海苔原藻がスクリユウコンベアの螺子溝に詰まつて移送ができなくなるという問題点が生じること及び右問題点の対処策について記載されているということができる。

甲第四号証記載のものにおいて、移送の対象とした海苔原藻は、右認定のとおり、短く分断されて相互の連繋性のないものであつて、本件考案が移送の対象とした長短混在のものとはその長さを異にし、したがつて、同号証記載のものにおいては、長い海苔原藻がスクリユウコンベアの軸杆部分に絡み付くという現象は起こり得ないと解されるから、同号証記載のものにおいて、前記のとおりスクリユウコンベアの螺子溝に海苔原藻が詰まるということは、本件考案において問題とされている海苔原藻が絡み付くこととは異質の現象であるといわざるを得ない。

そうすると、甲第四号証に前記問題点とその対処策が記載されていることをもつて、海苔原藻が絡み付く問題点とその対策が示されていたということはできず、同号証について、海苔原藻の給送切断装置における原藻送出装置に海苔原藻の絡み付くのを防止する手段を講じることを予測させる記載は認められないとした審決の認定に誤りはなく、原告の前記主張は理由がない。

右の点に関連して、原告は、本件考案も甲第四号証記載のものも共に、海苔原藻を円滑に給送することを技術的課題とするものであり、同号証記載のものにおいてスクリユウコンベアの螺子溝に海苔原藻が詰まつて空転する原因は、海苔原藻がスクリユウコンベアに付着して絡み付くからにほかならず、同号証記載のものが対象とする海苔原藻も本件考案が対象とする海苔原藻と同様に絡み付きが生じるという特性を有しているものであつて、その点で相違するところはなく、また、この種機械の性質上、実際の使用に際しては海苔原藻の長さ別に処理するというものではない旨主張する。

確かに、本件考案も甲第四号証記載のものも共に、海苔原藻を円滑に給送することを技術的課題とするものである。

しかし、前記認定のとおり、甲第四号証記載のものが対象とする海苔原藻は機械採取などで比較的短く分断されているものであるのに対し、本件考案が対象とする海苔原藻は長短が混在していてスクリユウコンベアの軸杆に捲き付くときには連繋してビニール紐のごとく引き伸ばした状態になるものであつて、両者はスクリユウコンベアヘの付着現象を異にするものであり、その長さによつて性質を異にするものといわざるを得ない。そして、甲第四号証に記載されているスクリユウコンベアの螺子溝に海苔原藻が詰まつて空転する原因は、短く分断されて粘着性のある海苔原藻がスクリユウコンベアの螺子溝に付着するからであつて、本件考案のように長い海苔原藻がスクリユウコンベアの軸杆にくわえ込まれて絡み付き、次々と長短の海苔原藻を連繋させてビニール紐のように引き伸ばした状態で多重に捲き付くからではない。

したがつて、原告の右主張は採用できない。

また、原告は、当業者が甲第四号証に記載されている詰り状態の防止手段をみれば、本件考案における絡み付き防止手段を予測することはきわめて容易である旨主張するが、同号証記載のものは、比較的短く分断された海苔原藻を対象とし、長い海苔原藻の処理については考慮していないのであるから、同号証記載のものから長い海苔原藻のスクリユウコンベアの軸杆への絡み付きという問題点は容易には認識し得ないものというべきであつて、原告の右主張も理由がない。

なお、成立に争いのない甲第五号証(昭和五二年実用新案出願公開第一〇〇八九二号公報)、甲第六号証(昭和五二年実用新案出願公開第一六二二八九号公報)によれば、右各号証にも海苔原藻の給送切断装置における原藻送出装置に海苔原藻の絡み付くのを防止する手段を講じることを予測させる記載はないことが認められる。

3  次に、原告は、甲第七号証(昭和三七年実用新案出願公告第一三二九二号公報)には、スクリユウコンベアの軸杆及び翼部へ絡まりやすい茶葉などを二本の螺旋(共に中空無軸のスクリユウコンベア)により円滑に移送できる旨の記載があり、甲第一一号証(昭和五三年実用新案出願公告第一〇七一〇号公報)には、弾性及び粘性のある物質の移送にコイルバネ(中空旋回線)の使用が有効である旨の記載があつて、右各号証には、絡み付きやすい物又は粘着性の大きい物を移送する場合に中空無軸のスクリユウコンベアが有効である旨の記載があるといえるから、右各号証について、無軸の中空状旋回羽根を被移送物がスクリユウコンベアに絡み付くのを防止するために用いることを示唆する記載も認められないとした審決の認定は誤りである旨主張するので、この点について検討する。

成立に争いのない甲第七号証によれば、同号証には、「従来茶葉を輸送するのにベルトコンベア、またはスクリユウコンベアを使用することは普通に行われる所であるが、茶葉はそれが生葉である場合に茎も葉も突出的でたがいに絡まり合い輸送しにくいものであり特に蒸胴の口に向つて平均に押込んで連続供給するためには単一スクリユウコンベアでは充分に所期の効果を納めることが出来ないものである。」(第一頁右欄第五行ないし第一二行)、「本考案は貯留函に連続する輸送室内に特に二つの輸送螺旋を並列に装置し、しかも該輸送螺旋は特定の構造に作つたので、輸送室内における生葉螺旋の始端部において緩やかな攪拌的移動作用が行われつぎの部分から左右螺旋の輸送作用が次第に活発となり、終端部に至つて左右の翼板がたがいに内側に向つて生葉を押え付けるような作用を起すので、絡まり合う茶葉も有効に供給口に送り込まれるのであつて、これがために輸送室内に生葉が停滞することなく、したがつて葉を傷めずして円滑にかつ平均に所要部に供給することが出来る」(同第一二行ないし第二三行)と記載されていることが認められ、右記載内容によれば、茶葉は、茶葉同志が互いに絡み合いやすく、単一のスクリユウコンベアでは輸送しにくいために、甲第七号証記載の考案は、二本の中空スクリユウコンベアにより有効に輸送するようにしたものであつて、スクリユウコンベアの軸杆への茶葉の絡み付きを解決しようとしたものでないことは明らかである。

次に、成立に争いのない甲第一一号証によれば、同号証には、「従来のセメントコンクリートでパイプを作るときは、パイプ用型枠内に鉄線のかごに入れ、これを水平に置いて強く回転を与えながら、スクリユウコンベアでコンクリートを投入していた。しかし、樹脂コンクリートの生地は、セメントコンクリートに比べて流動性が少なく、ミキサから出て来たものは、柔かい粘土、あるいは、つきたてのモチのような状態で、粘性に富んでいる。したがつて、スクリユウコンベアで、長い供給用パイプの中を押してゆくときは、抵抗が過大になる。」(第一欄第二七行ないし第三七行)、「本考案は、樹脂コンクリート生地の粘度の高い点を利用し、スクリユウの代りにコイルバネを用い、簡単な、小馬力の装置で、しかもコンクリートパイプ用型枠内面に均一に樹脂コンクリートを供給できるようにしたものである。」(第二欄第五行ないし第九行)と記載されていることが認められ、右記載内容によれば、粘度の高い樹脂コンクリートの生地をスクリユウコンベアで移送すると、抵抗が過大となるが、甲第一一号証記載の考案は、スクリユウコンベアの代りにコイルバネを用いることによつて右コンクリートは大きな抵抗を受けることなく移送ができるようにしたというものであつて、スクリユウコンベアの軸杆への樹脂コンクリートの絡み付きを問題とし、その解決をしようとしたものでないことは明らかである。

したがつて、甲第七号証、甲第一一号証について、無軸の中空状旋回羽根を被移送物がスクリユウコンベアに絡み付くのを防止するために用いることを示唆する記載も認められないとした審決の認定に誤りはなく、これに反する原告の前記主張は理由がない。

なお、いずれも成立に争いのない甲第八号証(昭和四四年実用新案出願公告第三七六号公報)、甲第九号証(昭和四五年実用新案出願公告第九五六三号公報)、甲第一〇号証(昭和五二年実用新案出願公告第四七二六七号公報)、甲第一二号証(昭和五一年実用新案出願公開第二二二八六号公報)、甲第一三号証(昭和五三年実用新案出願公開第一一五五八八号公報)によれば、右各号証には、無軸の中空状旋回羽根を被移送物がスクリユウコンベアに絡み付くのを防止するために用いることを示唆する記載はないことが認められる。

4  前記2、3において認定のとおり、甲第四号証ないし甲第六号証には、海苔原藻の給送切断装置における原藻送出装置に海苔原藻が絡み付くのを防止する手段を講じることを予測させる記載はなく、甲第七号証ないし甲第一三号証には、被移送物がスクリユウコンベアに絡み付くのを防止するために用いることを示唆する記載はないのであるから、スクリユウコンベアの軸杆への海苔原藻の絡み付き防止のために、甲第四号証ないし甲第六号証に記載された海苔原藻の給送切断装置におけるスクリユウコンベアを、甲第七号証ないし甲第一三号証に記載された中空無軸の旋回羽根にすることは、当業者がきわめて容易になし得ることではないものといわざるを得ない。

そして、本件考案は、「スクリユウコンベアを無軸の中空状旋回羽根に構成した」ことにより審決認定の作用効果を奏するものであることは、前記1に認定のとおりである。

以上のとおり、審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

三  よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

原藻タンクに往復揺動自在な揺動腕を横軸支するか、あるいは、原藻タンクに水平回転自在な回転翼を縦軸支し、当該揺動腕又は回転翼のいずれか一方と横移送用のスクリユウコンベアとで原藻送出装置を構成し、そのうち、当該スクリユウコンベアの枢設手段を海苔原藻の給送側が自由端でその基端部を回転可能な固定端とする片持支持手段となし、原藻タンクに投入した海苔原藻を前記原藻送出装置を介して切断機の供給口へ給送すべく構成した海苔原藻の給送切断装置において、少なくとも海苔原藻の給送側に位置する前記スクリユウコンベアを無軸の中空状旋回羽根に構成したことを特徴とする原藻送出装置。

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